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「俺、ひょっとして……アンタが生きてる限り、死なないのか?」  行き当たった結論をすぐに尋ねると、死神は笑って両腕を組んでいた。 「そうかもしれないね。羽をひっこぬければいいけど、羽の出し方すら、お前はわからないだろ?」  背中の内で、ちくちくと痛む何か。何てことだ、と彼は、体中から力が抜ける気がした。  眠たそうにあくびをする死神は全く、何も考えていない。こうなった理由もどうでも良いらしく、解決する気は微塵も見られなかった。 「お前がいいなら、更にオレの血も分けるんだけど。もしくはお前の血をもらうんだけど」  最早何が言いたいかもさっぱりわからない。感情の機微というものがこの死神にはほとんどなく、言葉の内で何処が重要なのかよく掴めないのだ。 「帰りたいなら地上に送るけど、そこから先は知らないよ。オレもそろそろ、塔に帰らないとだし」 「…………」  すっかり暗くなった空の下で、死神がよっと立ち上がった。  昨日から寝ていた場所には帰らず、違う所に向かうらしい。しかしその行く先でも、結局眠りこけるだけなのだと、ほどなく彼は知ることになる。  記憶がないまま、帰るかどうかも決められず、彼はとにかく死神の後に続いたのだった。
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