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 それなら彼の記憶に関わりそうな、もう一つの夢――  スーファミだのVRだのと謎の言葉を言っていたのは、誰だったのだろう。  あまりにすることがないので、塔の壁にもたれて座り、記憶探しだけを彼は思う。  そんな所に、その少女の声は、天国の秩序を汚す不穏さで唐突に響いていた。 ――私は貴方に……その人に、殺されたのよ……?  ぞくりと、全身に寒気が走った。  対して胸の上では、ペンダントが警戒するように熱を増している。先程汲み取った感情を繰り返し繰り返し、彼に訴えてきている。 「……え?」  扉のないくり抜き型の塔の入り口を、彼は悪い予感と共に見やる。  白い石の壁の中で、ぽっかり黒い闇が差すそこには、影を持たないおかしな何かが隠れて立っていた。 「……!」  彼と死神以外、何もいないはずの天国で、彼らを見ている黒い何か。  気付かれたとわかったのか、何かはさっと身をひるがえし、足音も立てずに逃げ出していく。 「って……!」  そうして侵入物があるのに、死神は呑気に眠ったままだ。彼はとにかく立ち上がると、不審な何かを追いかけるために塔を駆け出ていった。  追いかけたところで、彼に何ができるのだろう。  たった数秒走っただけで、すぐに息切れが始まる脆い体に彼は舌打ちする。  塔を遠巻きに取り巻くように林が敷かれたこの辺りは、彼が最初に目覚めた場所より、何故か空気が薄く感じられた。
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