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 白い壁を背にして黙って立ち尽くす、黒ずくめの少女を見ていると、僅かな記憶が浮かび上がってきた。  それはおそらく、少女が思っていることだった。少女の姿は見えず、銃を持つ彼の姿が見えているので、少女の視点の光景だろう。  今と同じ涼しげな服で、彼は少女に銃を向けていた。「アヤ」に会えばこうなることはわかっていたと、痛ましげな苦い顔をしながら。  蝶のペンダントと、左腕に黒いバンダナも巻いており、ほぼ同じ姿である鬱金の髪の彼。  けれど青白い目色と、その内の心は全く違った。銃を構える彼はそれを、撃つ気は持っていなかった。 ――帰ろうぜ、鴉夜。心配しなくても、コイツの体はちゃんとコイツに返すから。  軽い声色で、重い決意を少女に伝える。どうやらペンダントの妖魔のように、彼に憑依している何者からしい。  けれどその憑依者は、少女が長年探している相手だった。つまり少女は、探し人が既に死んでいる現実を突きつけられていた。  彼が憑依されやすい体質であるばっかりに、その事実は覆い隠されていたのだ。 ――……アナタは……殺して、しまうの……?  彼の体の主とも、少女は友人だった。そこに憑依している、探していた大事な相手。  彼のことも心配なのだが、憑依が解かれれば、大事な相手が体を失う。本当に死んでしまうことになると、その怖れが少女を激しく混乱させた。  それが少女の内の闇を呼び起こすと、知っていて会いに行けなかった相手の、切なる悪い予感の通りに。
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