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 仮にも死神を殺そうとした彼は、膝を抱えて俯きながら、力無く尋ねるしかなかった。 「俺みたいなの……放置しといて、アンタはいいのか」  天国を守るという死神が、その命を狙った彼という病魔を、何の気もなく内包している。  殺意が無かったとしても、死神の力で生かされているだけで同じだった。それは何がしかの負担を必ず、死神にかけているはずなのだ。 「何でアンタは……俺にアンタの羽なんて、与えたんだよ」  死神はそこで、落ち込む彼をさらに凹ませる事実を、けろりとした無表情で伝えた。 「何だ、それも忘れてたんだ。お前がオレを殺したから、オレの羽はお前に奪われたんだけど?」  開きっ放しの窓に、自分でかけたらしいカーテンを開き、月の光を入れながら坦々と続ける。  「命を奪うって、そういうことだよ。奪った責任、命を背負う、みたいなものかな」  そう言えば確かに、黒い翼が彼に遷ったのも、同じ理屈のはずだった。  言葉を失う彼に、死神は窓の外の遠くを見ながら、窓枠に頬杖をついた。 「オレとお前は、その時から命を共有してる。でもお前が羽を使ってなかったから、繋がりは一旦途切れてたんだけど」  振り返ると、今度は窓枠に座り、月を背にしてにやりと笑った。 「オレのことなんて忘れてるのに、お前はわざわざここに来たんだよね。その理由は、オレこそ聞きたかったよ」  死神は彼に、自分が彼を連れ込んだと言った。それはあくまで、死神の羽が彼をここに誘ったという意味だったらしい。  その羽の存在など、彼は知りもしなかった。記憶を失う前は知っていた可能性もあるが、ここに来たのは真っ白になってからだ。
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