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何がどう、間違っているのだろう。どうして消えてはいけないのだろう。
天国に来るなど、彼は決して望んでいなかった。
それでもこの、虚ろな生活こそが、彼に与えられた罰なのだろうか。彼は自身の、あるがままを答えるしかない。
「いらないものは……早く、消えてほしい」
どうしようもなく、目障りだった。
何もできず、何にもならず、呼吸をしているだけの自分が。
死神はふと、無表情に戻ると、淡々とまた尋ねてきていた。
「いる奴って、何さ?」
その蒼い目が、彼を見透かすように、青白い月の下で光る。
「オレにはお前は、使える奴なんだけど」
この答はずっと、彼に告げられていたものだ。
死神の羽を奪い、「力」を横流しにされて、今の彼は意識を保っている。そこに何の利点があるのか、未だに彼はわからないでいた。
「……俺には、アンタの望みが、何一つわからないんだ」
それが死神の誘いに頷けない、彼の一番大きな理由だった。
「俺にアンタは……助けられないと思う」
この天国を守っていると、死神は言った。
誰もいない空ろな楽園を守る死神が、窓を離れて彼の前に立った。
「助けにならないなら、いらないって?」
彼に相変わらず、何も期待していない死神は、純粋に不思議そうだった。
「人に人は、救えないよ。お前の望みには、無理があるよ」
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