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もう一度窓の方に戻り、夜空を見上げながら、死神が綺麗に微笑んでいた。
「お前はホントに、余計なものだらけだね」
ここを守るため――「錠」を下ろすために造られたという死神には確かに、天国を守る役目以外に、余計な事情はなさそうだった。
その後ろ姿があまりに孤高で、彼はつい、余分なことを尋ねる気になってしまった。
「アンタは何で、一人でここを守ってるんだ?」
ここは余計なものを捨てる場所だと、死神は先程口にした。それには大きな意味があると珍しく感じられ、そこに言及した彼に、死神の表情がすっと消えていった。
特に反応したのは、「一人で」というところだ。彼が生きているなら、天国にいなくてもいいと言った死神が、ヒトの存在に拘っているようには見えなかったのだが……。
「……ここは、世界中の『力』が還って、また世界に出ていく場所でさ」
ぽつりと、先程までより拙い声で、背中を向けたままの死神が話を続けた。
「色んな余計なものが、混ざりまくったものが還って、本来の形に戻る。たとえば特に、五大要素の『地水火風空』は五つの領域にそれぞれ分かれて、純粋な五行の元素に戻っていく」
何やら先刻、北の地――水の領域に行くなと言っていたのを、そう言えばと彼も思い出した。
「そこに何か、良くないものが混ざったら、世界にも良くないものが出ていくわけで――」
だからこの地に、良くないものを侵入させるわけにはいかない。
それが天国を守る意味と言いながら、死神自身は、それはどうでもよいようだった。
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