_Side Kei.

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「デザイナー……チャイルド?」  怪訝そうにぽかんとしている橘鴉夜(たちばなあや)が、久しぶりに戻った診療所では、院長の(かい)と患者の間で謎の単語が飛び交っていた。  話題の当事者である患者の(れん)は、いかにも人外生物の尖った耳をかきながら、困惑顔の鴉夜に素早く説明してやる。 「オレみたいな人造の生き物のことっすよ、鴉夜さん。『(やいば)の精霊』なんて、普通いないっすからね、自然界には」  (れん)を名乗る金髪の少年は、何でも鋭く刃物にしてしまう「力」を持っている。その事は刃と以前、同じ劇団でバイトをしていた鴉夜なら知っているはずだ。  人外生物御用達な、橘診療所院長の養女である鴉夜は、人外生物を取り締まる神職に就いている。鋭く端整な顔立ちに、鴉の濡れ羽色の髪が映える、文句ない美少女の鴉夜に討伐されるなら刃は本望だが、バイト仲間時代には見逃されていた。刃がそうした不自然な存在だと、その時は気付かれていなかったのだ。
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