_Side Kei.

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 外来で刃を前にし、やれやれと院長が頬杖をつく。白衣以外は鴉夜と同じように黒ずくめの院長は、見た目は完全に似た者親子だった。 「やるなと言うのに、コイツのようなアホを産む魔学者が未だに後を絶たない。もっと酷い、人間の都合で造られた吸血鬼も知ってるが、用途を決めてヒトを創っていいのは神だけだと、何で誰もわからないんだかな」  アナザーワールドワイド、つまり異世界中に広がる人外生物診療所の異端な院長が言うわりには、常識的な内容だと刃は思う。  けれどそれは、娘のはずの鴉夜には全く通じなかったらしい。 「能力や種族をあらかじめ選んで、新しい子供を作ることなの? それって何が、そんなに悪いことなの?」 「おまえが言うか、アヤ。おまえもそれで被害を受けたクチだろ」  養女になる前、鴉夜は計画的に生を受けさせられた人間だという。古い風習である「神」への貢物にするため、生贄であることを隠して育てられたのに、鴉夜本人にその疑問が浮かばないのが刃には憐れだった。
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