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-Imanu'el-
その黒い翼は、翼を引き受けた者を暗闇に誘う、悪しき神意の永い黒闇。
悪魔のささやきに近いかもしれない。ささやくだけの悪魔の方が、まだ可愛げがあった。
黒い翼は外から体の殻を破り、心の奥までを侵す。彼の意思などまるで無視して、それなのに彼の望みとばかりに、彼のふりをして彼を動かす。
そんな彼を憐れむように、死神が大きく溜め息をついて両腕を組んでいた。
「それでもお前は……そいつのことを、助けたかったの?」
彼は吐き出しきれない激情のまま、背後の死神の服を掴んで引きずり倒した。
「アンタが、いるから……!」
ずっと無防備で、隙だらけだった死神は、あっさり彼に乗りかかられた。
動揺の欠片もなく無表情に見上げる蒼い目。彼は青白い月を背に、黒い怨嗟を吐き戻す。
「俺は……アンタを、殺したい……」
黒い襟に覆われた死神の首を、強張る両手が勝手に絞めにいった。
この憎悪は何処から来るのかわからないほど、悪心で震える手に力が入った。
窒息よりも前に、細い首の骨が折れそうなほど、彼の全霊が込められた穢れた指先。
黒く歪む彼を前に、死神はふっと、白く微笑んでいた――
update:2019.2.24
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