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「マリちゃん、きーにいちゃんと約束してないの?」
約束なんてしてる訳がない。
バレンタインデー自体、私の頭の中になかったし、電話番号だって、さっき駐車場で交換したぐらいだもの。
「桔平さん、先約があるんじゃないかなぁ…」
何気なく言った一言に、車内は沈黙した。
「…ええと…マリちゃん?ごめんね、バレンタインデーの先約の意味が分からないんだけど」
ルームミラーでチラチラとマリを見ながら、慶太郎が暫しの沈黙を破った。
「だって…もしかしたら、私より先に誘っている人がいるかもしれないじゃない?」
「…なあ、よく考えて。マリちゃんは桔平さんの恋人だろう?だから、それは…ダメだろ?」
「…………」
みんなは知らないけど。
私と桔平さんはまだ付き合って二日目なんだよ。
もしかしたら、先週のうちに誘ってる人がいるかもしれないでしょう?
桔平さんに片思いをしている人が、誘ってるかもしれない。
もし、その子にOKの返事をしていたら。
後から入ってその約束を反故させる事はできないじゃない。
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