antique 5

3/22
1643人が本棚に入れています
本棚に追加
/599ページ
「マリちゃん、きーにいちゃんと約束してないの?」 約束なんてしてる訳がない。 バレンタインデー自体、私の頭の中になかったし、電話番号だって、さっき駐車場で交換したぐらいだもの。 「桔平さん、先約があるんじゃないかなぁ…」 何気なく言った一言に、車内は沈黙した。 「…ええと…マリちゃん?ごめんね、バレンタインデーの先約の意味が分からないんだけど」 ルームミラーでチラチラとマリを見ながら、慶太郎が暫しの沈黙を破った。 「だって…もしかしたら、私より先に誘っている人がいるかもしれないじゃない?」 「…なあ、よく考えて。マリちゃんは桔平さんの恋人だろう?だから、それは…ダメだろ?」 「…………」 みんなは知らないけど。 私と桔平さんはまだ付き合って二日目なんだよ。 もしかしたら、先週のうちに誘ってる人がいるかもしれないでしょう? 桔平さんに片思いをしている人が、誘ってるかもしれない。 もし、その子にOKの返事をしていたら。 後から入ってその約束を反故させる事はできないじゃない。
/599ページ

最初のコメントを投稿しよう!