第2章 「進藤 達也」(シンドウ タツヤ)

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   1  進藤達也は六歳。かわぞえひかり幼稚園の年長組「すみれ組」に通っている。三清山賀製薬本社から一山離れた新興住宅街にある幼稚園だ。  昨日もいつもと同じように、一日の最後にはお別れ会が行われた。男の子十五名と女の子十五名が帰り支度を終えて、ピアノの椅子に座るまみ先生の周りを囲むように座った。まみ先生はみんなの顔を一通り見渡し、帰り支度が終わっているのを確認すると話し始めた。 「ちゅうもく! さあ明日は待ちに待った動物園遠足の日です。みんな楽しみかな? 」 「うわあ! 」子どもたちの歓声が上がる。 「はーい 先生も楽しみです。お弁当におやつ、お手拭き、レジャーシートをリュックに入れて忘れずに持ってきてね」 「はーい」 「それに水筒と帽子も忘れずにね。分かりましたか? 」 「はーい」 「じゃあお歌を歌って帰りましょう」 「はーい」  まみ先生の軽快なピアノの伴奏がはじまった。そして子どもたちの大合唱が響く。 ♪  今日も一日 すみました  なかよしこよしで お片づけ  先生さよなら またまたあした  イェーイ!  おゆうぎ おうたも すみました  なかよしこよしで 帰りましょう  みなさんさよなら またまたあした  イェーイ!    いつもの事ながらイェーイ! は全員ジャンプで盛り上がる。これがないと幼稚園児は帰れない。
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