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何の音もしない世界。
何も見えない世界。
自分は死んだのだろうか。
これから地獄へ行くのだろうか。
もう二度と、彼女に会えない事だけは確かだ。
穢れなど知らない綺麗な魂の彼女は、必ず天国へ行くだろうから。
結局、感謝の一つも伝えないままになってしまった。
生に縋るつもりは無いけれど、それだけは悔やまれる。
自分のせいで傷付いた彼女は、今幸せだろうか。
こんな自分にも、彼女の幸せを願う事位は許されるだろうか。
そう思った時、誰かの手が額に触れるような感覚があった。
小屋で伏せっていた頃を思い出す、懐かしい感覚。
(神無……)
その名を心で呼んだ瞬間、ふっと意識が覚醒した。
ゆっくりと目を開けると、微笑む娘の姿が見える。
「良かった……!気が付いたんですね」
耳に届く、柔らかな優しい声。
(神無……?)
唇を動かして呼ぼうとしたが、上手く言葉が出て来なかった。
黙ったまますぐ側に座る娘を見詰め、妙な事に気付いた。
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