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1.お風呂の思い出
「にいちゃーん、おれ、凄いこと発見したー」
湯船の中に潜っていた弟の勇輝が、ザバっという音とともに顔を出し、得意げに言う。
「なに?凄いことって?」
シャワーで頭を流しながら兄の幸一が尋ねる。兄の幸一が小学5年生、弟の勇輝は二つ下の小学3年生。二人兄弟は仲が良く、お風呂に入るときはいつも一緒だった。
「あのね、洗面器を、こうさかさまにして湯船に浮かせて…」
勇輝が言葉通りに洗面器をさかさまにして湯船に溜まったお湯の水面に浮かべる。
「それから、そのまま沈めるんだよ。空気入るから洗面器が浮かんでこうとするんだけど、おさえつけて沈めるんだ」
勇輝がぐっと両手に力を入れて洗面器をさかさまの状態のまま押し下げると、洗面器はさかさまのまま完全に水中へ沈んだ。
「こうするとね、水の中なのに洗面器の中で息ができるんだよ!」
再び勇輝がザバっと湯船の中へ潜る。体は仰向けの状態になっているが、どうやら顔は両手で沈めている状態の洗面器の中に入れているらしい。
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