第5章

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「やあ、よく帰って来てくれた」 国境を超えて、城へと辿り着き、兵士に連れられてやって来たスコアとノトを迎えたミュジィーはニッコリと笑って言った。 ここに来るまでの間、スコアの目に映るノトはずっと不気味だった。 まるで感情が抜け落ちたように。 ノトは、前王が亡くなってから、スコアの身体を求める事は無くなった。 前王が亡くなった知らせが届いた日の夜、慰めを求められると思い覚悟していたが、何も声が掛かる事なく、スコアは自室へと戻ったが、もしかしたら呼びに来るかも知れないと思い起きていて、とうとうそのまま朝を迎えた。 呼ばれては居ないが、早朝ノトの部屋へと様子を見に行くと、部屋からリベルタが出て来たのを見て酷く衝撃を受け、燃えるような怒りを覚え、リベルタの胸倉へと掴み掛かり、壁へと押し付け、 「何をしていたっ」 唸るように詰問すれば、 「はあ?ちょっ、苦しいってっ」 渋々と掴む力を緩めてやれば、リベルタはスコアの手を振り払って、襟を直している。 痺れを切らしてもう一度聞けば、 「何って、王様がずっと起きてるようだって、侍従から連絡があったから、前王に良くして貰った話を聞いてたから、そんな人が亡くなってやっぱり寝られないんだろうなと思って、でも身体に悪いから話しでもしながらあったかい物でも飲ませて寝かしつけに来たんだよ。んで、さっき寝たところ。だから、あんまり騒いで、起こすなよ。つーか、お前こそ何だよ?」 などと言われ、何でも無いと言って謝り、自室へと引き返し、激しい自己嫌悪と、先程の激情を不思議に思いその日はノトを気遣いながらも、言葉や態度は上滑りしていたと思う。
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