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「なんか最もらしい理由を付けて、僕の身を拘束でもしてこの国で預かってくれれば良い」
「はっ、それこそ悪足掻きだな。他国の王を勝手にこちらで拘束などと、それこそお前の国が許さないだろう」
灰色のガラス玉のような目を見据え、心底くだらない案だというようにミュジィーが吐き捨てて言えば、
「お忘れですか?ミュジィー兄上。俺はこの国の出身。あの国でこそ余所者なんです」
この国で暮らしていた頃みたいな口調で言う。
「だが、お前はコンドラストの王だ」
「だから、とりあえず生きていさえすれば、まず王政派は手を出せず、革命軍も王である僕が他国に生き残っていては都合が悪い。ただ、どちらも互いと戦いながら僕を取り返しに来る余裕は暫くは無いでしょう」
「暫くは、だろう」
「うん、常に戦をしていた頃に集まってくれていた兵が殆ど革命軍に行ってしまった王政派は、負けるからね。勝利して色々と落ち着いた頃に、僕の身柄を渡せって言って、応じなければ武力を行使して来るんじゃない?」
まるで、明日は良い天気になりそうだねくらいの感覚で答えるのへ、とうとう苛立ちを隠さず、
「結局攻めて来るんだろうが!」
胸倉を掴みそうな勢いで怒りを露わにする。
「そう、だから準備をするんだよ。僕があれだけ周りの国を攻め落とした中でこの国を残しておいた理由が、故郷を愛しているからなんてバカみたいな理由からだと思う?」
そんな訳無いよね、と小首を傾げた。
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