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「っ……返す、などと」
「だってそうでしょう?あ、そもそもスコアにとっては、ずぅっとミュジィーのものだから、返すっていう言い方は、違うかもね」
その通りだと、前までなら即答していただろう。
今は、胸が苦しくなって言葉が出て来ない。
「兎に角、そうだね……この台詞は言えた時の為に最期にとっておくとして……もう俺の側に侍る必要も、面倒を見る必要もない。さよなら、謝って許される事じゃないけど、今まで嫌な事させてごめんね、ご苦労様」
「俺はっ……」
漸く絞り出した声は、掠れて響いた。
こうして突き放されて漸く気が付いた。いつからなどと問われれば、分からない。初めから視界に捉えていて気に掛かっていて、自分から離れて、自分とは違うものを熱心に追い求める姿に、いつしかこのままでは側に寄り添える事は無くなるだろうという焦りと苛立ちに嫌悪までしていた。
「え?何?」
「今、やっと気が付いた。俺は、俺は、お前の事を愛しいと思っている」
「っつ……はあ?はははっ、ごめん、ごめん、長く異常な関係に巻き込みすぎたね。だから、おかしくなっちゃったんだよ」
目元を抑え上を向き、可笑しくて堪らないと、爆笑している。
「違うっ、俺は、本当にっ」
「名も心も魂も何もかも全て、ミュジィーに捧げている人間が何を言っているの?一度捧げたものを覆すなんてあってはならない」
目元から手を離した、ノトの冷たい声と眼差しがスコアを射抜く。
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