第6章

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敵がもう追って来ないのを確認して、道中、スコアの怪我の応急処置をし、漸く城へと帰り着いた。 「大至急、お前はちゃんと手当をしろ。その傷だ、下手すれば…」 ミュジィーは全てを言わずに、城の医者を呼び付けスコアを引き渡し、医務室へ連れて行かれるスコアを見ているノトへと、 「ふん、やっと薄気味悪い面以外を晒したな」 嘲笑うというより、何処か揶揄うような口調で声を掛けた。 「…別に、大事な腕に怪我をしてまで俺を庇うなんてバカだなぁと思って、呆れてるだけだよ。そうまでして生かしておいても、貴方にとっても彼にとっても徳なんて無いでしょう」 「ああ、この国の王である私には無いな。だが、今助けた所で放っておいてもそう遠く無い内に尽きるだろうお前の命が、自身の命より大切だと思っているであろう男なら、俺も知っている。確かにバカな男だ」 その男も、全てを捧げて仕える王が許可すれば、ピアノを弾けなくなるくらいならば、命を絶つかも知れない男だ。 しかし、その男は全てを捧げた筈の王とは別の男を庇って腕を負傷した。 ピアノを満足に弾けなくなるかも知れないのに。
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