第1章

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ノトが父に見限られ、ピアノを辞めてから2年が経ち、16歳となった。 ピアノを辞めてからのスコアのノトに対する接し方は、父と同じく冷たくて、兄と同じく興味の無いといった感じだった。 ピアノコンクールは18歳から任意で受けれるから、スコアのそれは、子猫を守る母猫のように酷いもので、 「ミュジィー様の邪魔になるから周りをウロウロするなっ、目障りだっ!」 と何度も怒鳴られた。スコア自身は、ミュジィーと一緒にコンクールを受けるつもりで、この年までコンクールを受けず、自分の練習とミュジィーを支えながらも切磋琢磨してきた。 スコアのミュジィーに対する想いは敬愛とライバル意識だ。 ライバルがいる事を父もミュジィーもとても喜び、だからこそ、スコアがコンクールを受けるのを待ち、同じ舞台で戦える事を心底楽しみにしていた。 王となった者は毎年コンクールで1番になった者と演奏で戦い、勝ち残れば王続行で、負ければ隠居となるから、もし先にスコアが王となり、ミュジィーがスコアを負かしたとしたら、スコアがミュジィーを支えていくことは叶わなくなる。 「子供の頃からコンクールでトップクラスに入り、トップとなったミュジィー様を側で支える事が私の夢でしたが、今日ばかりはトップを目指して全力で貴方に挑んでみせます」 「望むところだ」 スコアとミュジィーが堅い握手を交わした。 失礼な話だが、2人とも他の選手など眼中に無くて、お互いの、どちらかがワンツーフィニッシュと信じて疑っていない。
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