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コンクール当日、屋敷の廊下ですれ違う正装姿のスコアにノトは、
「頑張ってください!スコア兄さん」
と声をかければ、久しぶりにスコアがチラリとノトへ視線をやり微笑んだように見えた。
それは一瞬で、ノトには目もくれず行ってしまったミュジィーの後を付いて去って行ってしまった。
観客としてこの国で一番大きい建物であるミュージックホールへと向かい、父のおかげで前の席で観賞することができた。
最高の拍手と王賞はやはりミュジィーのもので、スコアは次いで二番手だった。
ミュジィーと現王の対決なんてノトはそっちのけで、先程のスコアの演奏がずっと身体中に響いている。
ノトにとっては、スコアの演奏こそが最大限の賛辞と王賞を与えるに相応しく、しばらく興奮は冷めやしなかったのだ。
現王とミュジィーの演奏対決は終わり、ミュジィーが現王を降した。
隣の父親は歓喜して泣いている。
ミュジィーが王城へ上がれば、ミュジィーの声がかかってスコアも王城へ上がるだろう。名実共に支えることになる。
コンクールで次点を取った男だ。どこからも文句は出ないし、寧ろ、子供の頃からの夢だったスコアにとっては願ったり叶ったり。
そして、ミュジィーの父親なら城に呼ばれ、訪ねるのは兎も角、何の興味もない弟であるノトはもう二度とスコアと会うことも無く、成人した後ノトは屋敷を出されどこかの農場か工場か、住み込みで働ける所で一生を終える。
ノトは知っていた。
それでもスコアに頑張ってください、などと言ったのだ。
大好きな人の夢を、自分も応援したかったから。
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