第1章

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ノトは歓声の中で、独り屋敷へと帰り、部屋に閉じこもってキャンパスへと向かう。 学校の選択種目から出題された課題だ。 締め切りが迫っていたのに描きたいものが決まらなくて、真っ白いままだった。 物心ついた頃からあまり好きではないピアノをやらされていた反面、絵を描くのが好きだった。 ピアノを弾くことで怒られた悲しさや苦しさが、キャンパスに線を引いてピアノにはない極彩色で塗り潰していくことで、癒されて楽しさを感じられたからだ。 思いの儘に真っ白の中に描き込んで、塗り込んで好きなものを作り上げる。 ノトにとっては、誰にも指図されない紙の上の自由が生き甲斐だった。 先程のスコアの演奏の素晴らしさや、離れ離れになるだろう寂しさをキャンパスに打つける。 描き上げた絵を、早くちゃんと見てくれる誰かに見せたくて、絵を描き上げた勢いのまま深夜に選択種目の顧問であるピーチャの家へと届けに行った。
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