第1章

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満開に咲く桜の花に太陽光が当たり、花弁一片、一片が輝いている。 桜の木の下や周りに設置されたカメラからのライブ映像が、講堂の大スクリーンに映し出されていた。 僕達はその映像を見ながら花見をしている。 配給の水と食料を食べながら。 2万年前地球に巨大な隕石が落下、人類は月にいた者達を除き全滅。 月面都市を建設中だった技術者や科学者など約4万人が、月に取り残された。 取り残された人類は幾多の苦難を乗り越え、少しずつ人口を増やしながら細々と月で暮らしている。 僕達が眺めている桜の木は、日本と言われていた国から月面都市建設に参加していた科学者のチームが、実験の為に月に持ち込んでいた数本の苗木の子孫。 透明な素材で造られたドームの中で大切に育てられている。 ドームの外側に設置されたカメラからは、遠く地球の姿も映し出されていた。 隕石の激突で巻き上げられた土砂により太陽光が遮られ、それを引き金に地球は氷河期に突入する。 だから地球は今真っ白な雪と氷に覆われた白い惑星で、古い写真に写っている青い地球では無い。 でも、地球の表面を覆う雪と氷が段々薄くなって来ていると、僕のお爺ちゃんが言っていた。 僕の子供か孫の時代になれば地球の雪と氷が溶け、青い地球を眺められるかも知れないとも言っている。 そうなれば地球の表面に桜の木を植樹して桜の木の下に寝転がり、満開の花の間から覗く青い空をバックにピンク色の花を見上げる事が出来るのだろう。 それが真っ白な地球を2万年の間眺め続けた、僕達月人の夢だから。
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