信号機の俺と猫のアイツ。

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 その言葉は、何がいいだろうか……。  簡潔に奴の足を止められる言葉……。    そんなことを考える間に、その瞬間は来る。  アイツの姿が見える。  こちらに向かうその足、……やはり私の方は見ない、か。    言葉を掛けるなら今だろう。 「おい。そこの、猫止まれ、いや止まるんだ」  ぎこちなく紡いだ俺の言葉に、奴の耳がピクっと反応した気がした。  聞こえたか!?  だが、顔が上がらない。反応されたのは気のせいか?    いやきっと小さくて聞こえなかったのだろう。 「こっちだ!! お前の瞳が、その青が、忘れられないのだ!!」  今度こそ……。どうだ!?  その場に止まった奴は、ゆっくりと顔を上げる。  光るその青い瞳が、正面でまっすぐと俺を見ている。  嗚呼……っ、やはり、美しい色だ。    声が、届いた。間違いない。俺の声に反応した。  やはりアイツは特別な存在だ。    きっとアイツにとっても俺は特別な存在に違いない。    とても嬉しくなり、さらに言葉を続けようと、今までの想いを伝えようとした。  だが、そんな俺の想いを、今まで聞いたことがないほどの音に遮られた。  車のブレーキ音とクラクションが響く。    その瞬間に、奴の体が、宙を舞った。    ゆっくりと落ちていく奴の体は、その場から動かない。  あれだけ自由に動いていた体が、今は道路に横たわったままそのまま。
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