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――何が起こったのか、一瞬分からず、でもすぐに濁流の如く目の前の惨状が理解を促す。
アイツがひかれた。……轢かれた? 何故?
止まったからだ。道路の真ん中で。……どうして止まった?
ああ…そうだ、俺だ。俺がアイツを止めた。
その結果が、俺が、あいつを、……殺した。
自問自答が止むことなくループする。
周りが見えてなかった。アイツの事しか考えてなかった。
アイツの事を考えていた時、アイツに声を掛けた時、自分が何の色をしていたのか全く覚えてない。
意識が猫に囚われすぎて、だから、……。
俺が……、俺が、奴を、殺してしまった。
俺が、声を掛けなければ、「止まれ」なんて言わなければ、アイツが轢かれるなんてそんなこと……。
と、その時、
「え?」
思わず言葉が漏れた。
猫がピクッと動いたのだ。
ゆっくりと身体を持ち上げようとして、よろけて、でも懸命に立とうとしている。
生きてる……?
その事実に、心底ほっとする。生きてる、生きてるんだ。大丈夫だった。
「違っ、違うんだ!! 本当に、俺はこんなことになるなんて思っても無くて!!」
急いで言い訳の言葉を紡ぐ。
立とうとしては、プルプルと足が震え、一歩踏み出しては、崩れ落ちそうになる。
その姿に、ハッとする。同じ失敗はしない。
大丈夫だ。
俺が、俺がお前がちゃんとこっちに渡りきるまで、ちゃんと他の奴らを止めてやる。
俺が止めてやる。俺が全部止めてやるんだ。
俺の赤を見れば、皆止まる。俺はそれを知っている。
お前が目の前にいる限り、お前が渡りきるまで、俺は絶対に青になんかならない。
お前の青い瞳が俺を映してくれるまで、俺は青になんかなってやらない。
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