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クラクションの音が鳴り響く中、ソイツが、何度目かのふらつきで地面に突っ伏した。
あっ……と、意識がそちらに向いてしまったその一瞬。
――奴の上を車が通りすぎていった。
そんな信じられない光景が俺を追い込んでいく。
「おいやめろ!!!! 止めろよ!!!」
俺の叫びは誰にも聞こえてないようで、それを皮切りにして車が次々と奴の上を走り抜けて行く。
叫びは聞こえなくても、俺の色は見えているだろう。
俺の真っ赤な色は。それなのに。
「止めろって言ってるだろ!!! なあ!! 頼むから……っ!!」
何故か分からないが、苦しさを感じる。
アイツの上を横切る奴らが、心の底から憎い。
「誰もソイツを通り過ぎるなんてするんじゃねぇよ!! 聞こえてんだろ!! お前ら!!! 何様のつもりだ!! 俺の特別だぞソイツは!! お前らが好き勝手にする権限なんてどこにもない!!」
俺が世界の中心のはずなのに。はずだったのに。
なんで、こんな、車さえ止められなくなってるんだ俺は。
車も止められない。お前から流れる赤い血も止められない。
こんな俺は、信号機失格だ。
俺の赤はなんて無力なんだろう。
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