1人が本棚に入れています
本棚に追加
何故僕がそこまで家のお風呂だけを愛しているのか。
感覚や雰囲気の話ではない。たしかに家のお風呂でないといけない理由があった。
僕はお風呂に入るとき、気を付けていることがある。
シャンプーボディーソープトリートメント洗顔。これらをしっかりすること。中途半端に洗うとこはしない。時間をかけてしっかりと洗う。
なんでそこまでするのか。
何故ならちゃんと洗わないと――――彼女に怒られてしまうから。
「ちゃんと洗ったの?」
「洗ったよ。全身ピカピカ」
「じゃあ入っていいですよ。――――お帰り」
「うん、ただいま」
彼女はそこにいた。
――いや、正確にはいない。姿は見えないのである。
いつからだろう。もしかしたら僕が生まれた時からずっといたのかもしれない。
彼女は自称お風呂の精霊だ。
お風呂でしか話すことが出来ず、お風呂で会話をしている最中も、その姿を眼に映すことはできない。
彼女は見えないが、たしかにそこにいて僕と毎日話をしてくれていた。
そう、これが僕がお風呂を好きな理由。
最初のコメントを投稿しよう!