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 子供の純粋さ故か、それともずっといたからだろうか。僕は彼女の存在を疑っていなかった。  しかし同時に、精霊なんてものが実在していないことも理解していた。だから彼女の事を誰かに話すことも無かった。  ちゃんと聞いた事は無い。だがおそらく、両親も彼女の事を知らないようであった。  ――僕だけに聞こえる声。  僕は彼女と毎日いろんな話をした。  学校のこと、家族のこと、勉強のこと、友達、テレビ…………。とにかくいろんなことを話した。家族にも話せない悩みを、彼女にはすんなりと話せた。  僕にとって彼女は、友達であり、先生であり、親であり、姉であった。  彼女は僕以上に僕の事を知っていた。  僕が忘れているような昔話した会話を、全部覚えていた。  楽しかった。彼女との会話全部――とはさすがに言えないが、彼女との会話が一番僕の心が安らぐ時間であったことは間違いがない。  ――そんな彼女とも、半年近く話していない。  人は成長する。僕は大学生になった。  僕は高校生で弓道部に入った。県予選を突破する程度の実力はあり、僕は大学でも弓道をしたい。そして弓道が強い大学に行きたい。僕はそう思うようになった。  僕はとにかく勉強を頑張った。僕の弓道の成績では、推薦をもらう事が出来なかったので、一般で入学するため勉強を頑張った。  そして僕は今、実家を離れ、大学に通うため一人暮らしをしている。
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