残念な上司は同期

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「なんで、前もって会議の確認してくれないんですか?こっちだって段取りがあるんですからね。なんとか間に合ったから良いものを。それと、佐久ちゃんって呼ぶのほんと止めて。」 大至急で作った資料を会議室の机に間違いが無いよう確認しながら次々用意していく。 「ごめん、佐久ちゃん。この借りは……うん、目一杯体で返すから許してよぉ。」 と、一緒に資料を並べながら鈴木が言う。 「結構ですっ!」 ったく、調子に乗るんじゃないわよ。腹立つっ。 とは言うものの…… 「取り敢えず、これで勘弁してあげるーー」 鈴木のネクタイをクイッと引っ張り、そっと唇を重ねた。 私の中に芽生え始めた気持ちの意思表示をしてみた。 この芽生えた思いが向かう先を私は既に知っている。 「えっ、さ、佐久ちゃん……今、佐久ちゃんからキスした?えっ、ここ会議室?えっ、ええっ ええーーーっ!」 「ちょっと騒ぎ過ぎだってば、会議室の外まできこえるわよ、ひゃぁっ!」 言い終わらないうちに会議室の壁に押し付けられると 「マジでヤバイから。そういう可愛い事するのなし。理性が吹っ飛ぶーーー」 唇はあっという間に深く塞がれた。 「んっ……」 誰かが来るかもしれないのに こんな所、見られちゃ不味いのに…… 離れそうになる唇を自分からまた追っていってしまう。 ああ、参ったな。 こんなはずじゃなかったのに…… だけど、 知ってしまったから。 あの日以来、鈴木から目を反らすことなくちゃんと見てきたから。 真っ直ぐな鈴木の気持ちを知ったから。 だから、 私も素直になろうーーー このキスが終わったら、ちゃんと言うんだ キスの後でーーー 「好き」 って。 終
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