残念な上司は同期

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「大体、私はあんたの事一度だってそういう目で見たことないし、見れない。いつだってのほほんとして、ヘラヘラしてて掴み所ないし、仕事だってやる気あるんだかないんだか適当にやってるようにしか見えないし……そもそも男としての魅力を感じられなーーー」「ちょっと来て」 鈴木にいきなり手を掴まれ脇道へと連れて行かれた。 「なによ、離して。止めてってば。」 「やだ。」 手を振り解こうとするのに全く力が敵わない。見た目は華奢なのに、凄い力……。今になって鈴木はやっぱり男の人なんだなって思う。 前を向いたままさっさと歩く鈴木に連れてこられたのは道から少し外れた小さな公園だ。 「こんなとこに連れてきてどうするーーーきゃっ」 言い終わる前に不意に、抱きしめられた。それもギュッと。 「ねぇ、なんなのよ。離して。声出すわよ。」 鈴木の体をなんとか押し退けようとするのに全く抵抗出来ない。 半ば諦めつつさっきから黙ったままの鈴木に話しかけてみた。 「ねぇ……何のつもり?いい加減にしてよ、悪ふざけにも程があるわよ。」 口では強がって言うもののこれまでにない鈴木の行動に動揺が隠せない。 鈴木の腕の中にすっぽり収まっていると鈴木の心音が聞こえてきた。とても速く打つその音が鈴木の真剣さを伝えてくる。 そして漸く鈴木の腕から解かれたかと思ったら今度は両頬を意外にも大きなその手で覆われた。そして、 「ちゃんと見て、俺の事。俺だって男なんだよ。わかってよ。」 そう言いながらグッと顔を近づけてくる。 今まで見た事のない色気を帯びた熱い目で私を捉える鈴木。 ーーーな、何よ……普段、俺とか言わないクセに……こんな事で流されないんだから とは言え急激に忙しく動き出した心音に気付かれないようにギッと睨み返すも 「佐久ちゃん、それヤバい……その顔、めちゃ そそる……」 息がか掛かるほどの至近距離で言われもう完全に私の脳はオーバーヒートだ。 「ほんと、冗談やめよ。ねっ、わかったからさ。ねっ、離してよ。て言うか本気で大声だすよ?」 「いいよ。大声、出せるもんなら出してみな。」 色気を帯びた目で見つめられそのまま、一気に唇を塞がれた。
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