桜の木の下は、戦場だ。

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俺の名前は木下勝本。二十八歳。〇〇社で働くただのサラリーマンだ。 容姿普通、頭脳普通、成績普通、年収普通の、何処にでもいる一般的な冴えない男。その為、結婚どころか彼女すらいない。 いや、欲しいとは思ってんだよ? けど、同じ会社で働く女性たちは大概が結婚してるし。独身だったとしても、全く好みじゃない。 合コンにもなるべく参加はしているのだが、連絡先すらもらえない結果に終わっている。 だが。 そんな俺にも、やっとチャンスが巡って来たのだ。 「桜木春香といいます!初めてのお仕事で、慣れない事ばかりですが。〇〇社に見合う働きをしていこうと思っております!これからよろしくお願いいたします!」 社内には、歓迎の拍手が響き渡る。 俺の脳内にも、歓迎の雄たけびが響き渡っていた。 あどけない、ショートカットの可愛い系。少し緊張している所がまた可愛らしい。 とても俺好みの新人社員が今年、〇〇社へと入社してきたのだ。 これはきっと彼女いない歴年齢の俺に、天使がチャンスをくださったのだと。勝手に思っている。 しかも来週は、会社の毎年恒例。お花見会。 ここで少しでも、桜木さんとの距離を縮めておかなければ。 俺の他にも、桜木さんを狙ってる奴はいるみたいだしな。 「ふっ。今年の花見は戦場になりそうだ」 おかげで毎年苦になるお花見会も、今年だけはとても楽しみで仕方ない。 「よし。今年の場所取り係は俺だし。ここは一番いい場所を確保して、まずは頼りになる先輩アピールをしておこう!」
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