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澪はあの時、口では何とも思ってないと言いながら、自分の中の恋心に気づいた。
夏海を一途に想い続ける明貴を、いつの間にか好きになっていたのだ。
他の女の子に恋する姿が愛おしいなんて、どうかしていると澪も思う。
なのに、一度自覚してしまったら、明貴の姿を目にするたびに甘く切ない感情がこみ上げてきて、そばに行きたい声を聞きたい話したいと欲がむくむくわいて止まらなくなる。
夏海しか見えていない彼が相手じゃ、恋が成就するはずないのに。
「大好きだよ、あきちゃん」
夏海の口調を真似て言ってみる。
もし自分が明貴の幼なじみだったら、他の男の子なんか相手にしないで明貴だけを見るのにと思うと、切なくてたまらない。
だけど、どんなに想っても彼の幼なじみは夏海であって、澪ではない。
澪が明貴と話せるようになったのは恋心を否定したからで、もしやっぱり好きなんて口にしたら、また遠ざかって無視されるに違いない。彼にとっては、夏海以外の女の子から向けられる好意は、迷惑でしかないのだ。
「あきらめないと……」
澪は自分に言い聞かせながら泣き続けた。
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