4、願うのは君の幸せ

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「えっ、鈴城くん!?」  澪はびっくりして声を上げた。姿を見るのは一年ぶりだが、身長も全体のイメージも前とはだいぶ違う。 「大きくなったでしょ?」  夏海はフフッと笑って階段に向かう。 「去年から急に背が伸びてさ、あっという間に追いこされちゃったよ」 「そうなんだ……」  澪はチラッと夏海の左手の指輪を見て、それから思い切って口を開いた。 「夏海、なんで鈴城くんを選ばなかったの?」  ホームにたどり着いたら、夏海はきっと明貴に声をかける。だからその前に答えを聞きたかった。 「えーと、ときめかないから?」  夏海は深く考える様子もなくそう言った。 「弟みたいで可愛いけど、異性としてはタイプじゃないもん」 「そっか」  澪はそれしか言えなくて、ごまかすように口元に笑みを浮かべた。  高校の合格発表後、へこんでいた澪を励ましに美月が家に来てくれて、その時、明貴が連絡を取りたがっていると聞いた。  番号を聞いて電話してみると、夏海の力になってやってと頼まれた。明貴は南高に合格してしまったから、自分がいくら声をかけても逆効果で、なぐさめることもできないと泣いていた。  なんて無神経な頼みをするんだろう、と思ったのもたしかだ。  でも澪はそれ以上に、彼の一途さを愛しく思ったから、夏海に声をかけ耳をかたむけて支えた。立ち直るにつれて変わっていく夏海に戸惑いながら、ただひたすら明貴のために。 「おはよ、あきちゃん」  屈託なく声をかける夏海に、スマホをいじっていた明貴が顔を上げた。くっきりした二重まぶたの大きな目が彼女に向けられる。 「おはよう」  うれしそうに微笑む彼の視界には、夏海しか入っていないみたいだ。  夏海に彼氏がいることと、明貴が夏海を好きなことは、まったく違う次元の話なのかもしれない。
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