1、可愛い同級生

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「高清水の下の名前、れいって読むの?」  提出するプリントに名前を書いていると、隣の席から鈴城明貴が声をかけてきた。最初の席替えをしたばかりで、二人が口をきくのは初めてだった。 「あ、うん」  名前を知られていたことに驚きつつ、緊張気味にうなずく。 「みおって読むのかと思ってた」 「よく間違われる」 「かっこいい名前だよな」 「えっ、そうかな?」  ドキッとした澪に、明貴は自分のプリントを見せる。 「オレも漢字だとふつうなんだけど、これであきって読ますとかおかしいだろ?」  澪はどう答えていいか戸惑い、あいまいに首をふった。  明貴は淡い朱色の唇を嫌そうにゆがませているが、それすら愛らしく見えてしまう顔立ちで、澪はまた羨ましさを感じた。 「あたしも前は名前やだなって思ってたよ」 「嘘だ」 「ほんとだよ。男みたいとか、普通はみおって読むのにとか、みんなに言われて」  明貴は身を乗り出した。 「同じ同じ! オレもさんざん女みたいとか言われてさ」  大きな目を向けられた澪は、その瞳にうつる自分の貧相な顔立ちにがっかりしてしまう。 「あたしたちの名前、逆だったらよかったね」  あき、という名前の女の子なら沢山いる。澪みたいなふつうの子に似合う、ふつうの名前だ。 「それな。オレが高清水澪なんて名前だったら、どこ行ってもフルネーム名乗るわ」 「そこまで?」  澪は思わず笑ってしまった。 「高清水さ、前は名前やだったってことは、今は違うの?」 「うん。お母さんに、澪の一文字には親としての色々な思いをこめたんだよって言われて」 「いいな。うちの母親なんか、可愛いくて似合ってるからいいじゃないとか言ってさ……まじ、ふざけんなよって」  明貴は意外なほどよくしゃべった。顔に似合わず低めの声なのが不思議だ。 「じゃ、今は好きなの?」 「たぶん好き」 「ふーん……オレも好きになれる日が来るのかな」 「うん、そのうち好きになると思う」  澪が断言すると、明貴はちょっとはにかんだような顔で笑った。
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