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鈴城明貴と隣の席になって三日目。
登校したら澪の席に夏海が座って、明貴としゃべっていた。
一緒に教室に入った美月は、二人を見ると気遣うような顔をして澪を見た。
「あたしが言ってあげるね」
「え? なに?」
美月は澪の席にまっすぐ向かった。
「おはよ、夏海」
声をかけられた夏海はふり向き、澪を見ると席から立ち上がった。
「おはよう。ごめん、みおちゃんの席借りてた」
名前を間違われてがっかりした澪の耳に、明貴の声が届いた。
「みおじゃねーよ。れいって読むんだよ」
澪は少しびっくりしたが、明貴はなんてことない表情を夏海に向けている。
「え、そうなの? ずっとみおちゃんだと思ってた」
「夏海ボケ過ぎ。あたしとかまわりの子、けっこうみんな澪ちゃんって呼んでるじゃん」
美月が突っ込むと、夏海は申し訳なさそうな顔で澪に手を合わせた。
「ごめんね!」
「ううん、気にしないで」
澪が笑って首をふると、夏海はほっとしたように表情をゆるめてニコッと笑い、自分の席に戻って行った。
「鈴城くん、さっきはありがとね」
隣の席に顔を向けると、明貴は慌てたように、どこかから視線を戻して澪のほうを見た。うっすら頬が赤い。
「別にお礼言われるようなことじゃないし」
明貴はぶっきらぼうに言って、机に顔を伏せてしまった。ねみー、という小さな声が聞こえる。
何を……誰を見ていたのか、確認しなくてもなんとなくわかった。美月から、部活中いつも見ていると聞いていたが、実際こんなふうに気づくと、関係ないのに澪までドキドキしてしまう。
夏海の席を見てみると、近くの席の子と話していて、くるくる変わる表情が可愛い。みんなの中心にいるにふさわしい女の子だなと素直に感じた。
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