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「はじめから違うって言ってるのに!」
悔し涙を流しはじめた澪のところに、女子が集まってきて、その中には夏海もいた。
「よくわかんないんだけどさ、謝ったほうがいいよ?」
夏海は男子に冷たい目を向けた。
「女子みんな敵にまわしたら地獄だと思うよ」
美月のビンタより恐怖心をあおったらしく、男子は小さくごめんと言った。
そこでチャイムが鳴って、騒ぎはひとまずおさまったものの、澪は席に戻るのが怖かった。自分がちゃんと説明できなかったせいでこんなことになって、明貴にまで恥ずかしい思いをさせたのだ。
ハンカチで涙をぬぐい、思いきって席に戻る。隣を見ると、明貴はかたい顔でまっすぐ前を向いていた。
「ごめんね」
一言だけ謝ったが、返事はなかった。
その日を境に、明貴は澪と口をきかなくなった。
可愛らしい顔をこっちに向けてくれることもなくなって、おはようすら返してくれない。
ショックだった。
澪は謝罪の手紙を書いたけれど、誰かに見られたらまた変な噂になると思うと、怖くて渡せなかった。
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