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低い石塀で囲まれたうちに庭から、わたしはねえさまの家を盗み見したものだ。
位の高そうな太った男が入っていき、満足げな顔をして出てくる。それを見送るねえさまは青ざめた顔をし、なにか怖い目をしていた。
10歳くらいの時だったか。
その晩、わたしはねえさまのうちに泊まっていたのだけど、夜中に目が覚めた時隣の床が空っぽだった。
でも、小さなうちの中には人の気配がしていて、声や物音が壁越しに伝わってくるのだった。
隣に小さな客間がある。声や物音はそこから響いていた。
わたしは布団から起き上がり、格子窓から差し込む冷たい月の光に目をすぼめた。
10歳、たったの10歳だけど、特別ななにか、それも包み隠さねばならないようなことが隣で行われていることは察しがついた。
月の光はいよいよ怪しく頂上から輝きを落とし、すぐ裏にある海からは穏やかな波音が聞こえた。
がじゅまるの葉が騒いでいる。
どんどん激しくなる物音や声をぼんやりと聞きながら、わたしは立ち上がり、そろそろと格子窓の方へ近づいた。
外を覗いてみると、窓のすぐ側にがじゅまるの絡み合うような幹が壁のように聳えている。がじゅまるの上がざわざわすると思ったら、ぞろぞろと蛇が枝をつたって下に降りようとしていたのだった。
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