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毒蛇の目は月明かりに赤く光る。
隣から聞こえる声は、ねえさまと――とうさまの声だった。
わたしは窓枠を握りしめ、赤く光る蛇の目を眺めていた。
ウシねえさまが、按司様に目を付けられたのは、わたしが13歳の時。
按司様はユタのねえさまを何度か訪れていたのだった。
身なりこそ異様だったが、ねえさまは確かに美貌で年を感じさせない不思議な女性であり、按司様はねえさまをお妾にと所望したのだった。
「ウシと話をしているだけで癒される。そなたは月の光の精か」
そんな言葉を按司様がねえさまに囁いているのを聞いたことがある。
それは、とうさまがいる晩で、わたしはねえさまの家ではなく、自分の家の自分の部屋で寝ようとしていたのだ。
やけにお酒が進み、まだ飲んでいるとうさまを放っておいて、わたしは自室で寝間着になっていた。
その夜もなんとなく樹木がざわつき、月明かりがまぶしくて、わたしは格子窓から外を覗いたのだった。
おひげを生やした按司様が、庭の真ん中でねえさまと向き合っている。
黒い馬が按司様の後ろでまえがきをしていた。
月の光は一際まぶしく、ねえさまの黒髪は金に輝くようだった。
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