ドリュー

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 そのため外を歩いている人たちは、ドリューが近寄るだけで露骨に嫌そうな表情を浮かべました。 「汚いガキだなあ、こっちに寄るな」 「お前は臭いんだよ。向こうに行け」 「なんて不潔な子供なのかしら。あっちに行ってちょうだい」  道行く人たちは皆、ドリューに心ない言葉を投げつけました。  しかし、ドリューはそんな言葉にいちいち傷ついてはいられません。なぜなら、マッチを売らないと家に帰れないからです。道行く人たちの言葉など、彼女を襲う飢えや寒さや父親の暴力に比べれば、なんでもありません。 「お願いです、マッチを買ってください」  ドリューは必死で懇願しました。既に、指先の感覚がなくなっています。このままでは、指がどうなってしまうか分かりません。  しかし世間の人々は、冬の寒さ以上に冷たい心の持ち主ばかりでした。 「汚い手で触んなよ!」  若い青年に突き飛ばされ、ドリューは転びました。しかし、誰も助けてくれません。  もしドリューがきれいな服を着た可愛らしい少女であったなら、道行く人たちはマッチを買ってくれたのかもしれません。しかし、今のドリューはぼろ切れのような服を着た、汚ならしい子供にしか見えないのです。  そう、世間の人たちは……可愛い子供は助けますが、汚い子供は助けてくれないのでした。  突き飛ばされたドリューは、レストランの前で尻餅を着きます。寒さに震えながら、かじかむ指を温めようと必死でこすっていました。  そんな彼女の目に、見慣れないものが飛び込んできたのです。  目の前には、レストランのガラスがあります。ガラス越しに、四人の家族が七面鳥の丸焼きや、あったかいシチューを食べているのが見えました。  家族は、とても楽しそうにご馳走を食べています。その仲むつまじい姿と美味しそうな料理に、ドリューは寒さも忘れて見とれていました。  すると、レストランから店員の女が出てきました。 「ガキ! ここは、お前みたいな汚物の来るところじゃないんだ! あっちに行け!」  女給はドリューに、残飯を投げつけました。  残飯だらけの惨めな姿になったドリューは、路地裏にしゃがみこみました。もはや、歩く気力はありません。  寒い……いつの間にか、空から雪が降ってきました。雪は、容赦なくドリューを襲います。
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