勿忘草の詩

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綺麗な花、春の色。 それは桜の花ではありません。 もっと控えめで、もっと儚い春の青。 例えばですが、桜の花を春の微笑みと呼ぶのであれば、その花は春の涙と言えるでしょう。 ですが春はにこやかな表情のままで、涙はあまり見せません。そうして時が流れるうちに涙の青は忘れられてしまいます。人々は昔から、空高く咲き誇る微笑みを眺める事が好きですからね。 でも、私はそのさらに上を見てほしいと思います。無限に広がる空の色を。 それを見ると、私たちは淡いピンクの中に青を思い出すのです。 そして不意に、あの花が恋しくなるのです。 誰よりも健気に、誰よりも可憐に咲く花が...... 小さく春に咲く藍微塵。 その儚い青は、桜の木の下に隠れてあなたのもとへ届かない。 誰にも見つけられず、枯れてしまった藍微塵。 桜の花びらの霧の中、枯れてしまった藍微塵。 私の事を忘れないで 私の事を忘れないでーーー どこからか、寂しげな詩が聞こえますね。そんな時はそっと足元を見てください。ふんわり桜の絨毯の上を、その花は咲き誇っているはずですから。
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