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展望台からは空港と滑走路が一望でき、昨夜の事故が嘘のように整備され、通常通
り運行されている。
展望台の先にはヘムダルが待っていた。
ヘムダル「レノさん、わざわざすみません」
レノ「元気そうで何より。空港も元通りか」
へムダル「ええ。私の代理で急遽、職員の方が5人がかりでやってくれています」
レノ「人間にしたら5人分の作業……。ハードな職務だったんだな」
へムダル「私は、管制塔の仕事をするために生み出されました。この仕事ができなけれ
ば、存在する価値はありません」
レノ「元々作られた理由はそうだろうけど、お前の意思は尊重すべきだと思うな。できな
いことはできないって言わないと。仕事のクオリティにも影響が出るぞ」
へムダル「そんなことを言えば私は廃棄処分です。オーナーの指示に応えられるよう、ス
ペックを追いつけなければ。それを妨げるなら『心』なんて……」
レノ「妨げるような感情を持ったのか」
へムダル「……今までそんなことはなかったんです。でも昨晩は」
レノ「辛い、辞めたいって思った」
俯くヘムダル。
レノ「悪いが、あんたの『心を消したい』って願いは、やっぱり聞けない」
へムダル「どうしてですか……!?」
レノ「実はな、本来、アンドロイドに『心』なんて存在しないはずなんだ。ないものは消
せない」
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