第三話 「境界の見張り番 ~Diligent worker~」

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   展望台からは空港と滑走路が一望でき、昨夜の事故が嘘のように整備され、通常通    り運行されている。    展望台の先にはヘムダルが待っていた。 ヘムダル「レノさん、わざわざすみません」 レノ「元気そうで何より。空港も元通りか」 へムダル「ええ。私の代理で急遽、職員の方が5人がかりでやってくれています」 レノ「人間にしたら5人分の作業……。ハードな職務だったんだな」 へムダル「私は、管制塔の仕事をするために生み出されました。この仕事ができなけれ  ば、存在する価値はありません」 レノ「元々作られた理由はそうだろうけど、お前の意思は尊重すべきだと思うな。できな  いことはできないって言わないと。仕事のクオリティにも影響が出るぞ」 へムダル「そんなことを言えば私は廃棄処分です。オーナーの指示に応えられるよう、ス  ペックを追いつけなければ。それを妨げるなら『心』なんて……」 レノ「妨げるような感情を持ったのか」 へムダル「……今までそんなことはなかったんです。でも昨晩は」 レノ「辛い、辞めたいって思った」    俯くヘムダル。 レノ「悪いが、あんたの『心を消したい』って願いは、やっぱり聞けない」 へムダル「どうしてですか……!?」 レノ「実はな、本来、アンドロイドに『心』なんて存在しないはずなんだ。ないものは消  せない」     
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