第三話 「境界の見張り番 ~Diligent worker~」

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へムダル「私は仕事の休憩時間によくここに来ていたんです。旅客機をまじかに見ること  で、改めて自分の仕事の責任を噛み締めていました」 レノ「やっぱりヘムダルは、真面目なんだな」 へムダル「いえ。業務用アンドロイドとして当然です。職務に忠実でなければ」 レノ「いや、それとは違うさ。間違いなくお前の心が生み出した個性だよ」 へムダル「私の個性……ですか」    そんなヘムダルの足元に擦り寄ってくる、一匹の黒猫、ヴァンタ。 へムダル「ヴァンタ……」 レノ「野良猫? ずいぶん懐いてるな」    ヴァンタを抱え上げ、その赤い首輪をレノに見せるヘムダル。    首輪には「VANTA」の文字。 へムダル「空港の外れの埋立地で、箱に入れられ、捨てられていたのを拾ったんです」    ヴァンタをやさしく撫でるヘムダル。 へムダル「私は、この子と出会って、働く意味を考えるようになってしまった。私もこの  子のように人間に必要とされなくなれば捨てられ、その役割を終えるだけなのだとした  ら。そう考えるだけで、形容しがたい何かが、沸きあがってくるのです」 レノ「それが、ヘムダルの『心』か……」 へムダル「あの事故のときも、一瞬ヴァンタのことがよぎって、気がついたら……」    ヘムダルの肩にポンッと手を置くレノ。     
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