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へムダル「私は仕事の休憩時間によくここに来ていたんです。旅客機をまじかに見ること
で、改めて自分の仕事の責任を噛み締めていました」
レノ「やっぱりヘムダルは、真面目なんだな」
へムダル「いえ。業務用アンドロイドとして当然です。職務に忠実でなければ」
レノ「いや、それとは違うさ。間違いなくお前の心が生み出した個性だよ」
へムダル「私の個性……ですか」
そんなヘムダルの足元に擦り寄ってくる、一匹の黒猫、ヴァンタ。
へムダル「ヴァンタ……」
レノ「野良猫? ずいぶん懐いてるな」
ヴァンタを抱え上げ、その赤い首輪をレノに見せるヘムダル。
首輪には「VANTA」の文字。
へムダル「空港の外れの埋立地で、箱に入れられ、捨てられていたのを拾ったんです」
ヴァンタをやさしく撫でるヘムダル。
へムダル「私は、この子と出会って、働く意味を考えるようになってしまった。私もこの
子のように人間に必要とされなくなれば捨てられ、その役割を終えるだけなのだとした
ら。そう考えるだけで、形容しがたい何かが、沸きあがってくるのです」
レノ「それが、ヘムダルの『心』か……」
へムダル「あの事故のときも、一瞬ヴァンタのことがよぎって、気がついたら……」
ヘムダルの肩にポンッと手を置くレノ。
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