二人の英雄

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 この時代は、各国とも互いの動向を探り合っている状態であり、また、中原国家群の北方に位置する〈ウル山脈〉や、東に広がる〈ボナ砂漠〉などの難所もあるため、うかつな侵攻を控えてはいるものの、これらの大国が牙をむいたら、小国の集まりでしかないこの地は、ひとたまりもなく蹂躙されることは間違いなく、国王や太守、族長などの支配者達はそんな状況に怯えながら統治していたと思われる。  列強の驚異に対しては、国家群の各々が、東西北の大国や、それぞれの小国家同士との同盟関係、あるいは緩やかな支配下に入りながらも、自らの独立と尊厳を守り続けているのが現状であった。  そして中原国家群、いや、ゴンドアに住まう人々全てに襲い来る驚異は、人的なものばかりではない。  この大陸は、太古の時代に存在した科学文明が滅びて以来、様々な異常気象、様々な怪異、巨獣などが発生、出現するようになり、更に、人々から〈(ぜん)文明〉と呼ばれる時代には存在しなかった亜人勢力の拡大、台頭もあり、加えて、戦で破れた敗残兵などが徒党を組み、兇賊となって絶えず人々の生活圏を脅かしている。  何時の世も、命は、黄金よりも重く、貴重なものであり、それでいて、羽根のごとき軽さと、脆さを持つものでもある。  そんな中でも、人は生きることを放棄することはない。  そんな中だからこそ、人々は自分たちの尊厳を守ろうとする。  人々は生き残るための手段を、〈前文明〉の英知に求めた。  〈前文明〉――それは、西方の大国により西方暦が制定される遙か以前に存在した、正式名称不明の科学文明時代に付けられた俗称である。     
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