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「……歩兵と騎兵を前面に嗾け、鉄甲騎は大将を守るように布陣……よほど御身が大事か、それとも、砦の前に来るまで、攻撃を受けないと思い込んでいるのか……どちらにせよ、都合がよい」
「だったら、重擲弾筒で一気に吹き飛ばしてしまえばいいじゃないですか」
よほど下馬戦闘が不満なのか、先の若騎兵が機関銃を所定の位置に押し出しながら述べる文句に、騎兵隊長は少々哀しげな表情を見せる。
「……敵の身にもなれ。騎馬突撃も出来ず、一方的に砲撃で叩き潰されたら、それこそ騎士の面目が立たないではないか……」
実のところ、騎兵隊長もこの作戦には思うところがあった。
自軍の騎兵三十に対し、対手は四十騎。ただでさえ数に差が開いているというのに、そのうち十騎を後方支援に回し、その上で正面から戦わず、搦め手で騎士を突破した上で雑兵を蹴散らせと言うのだ。
無論、トゥルムはこの作戦の重要性を、そしてまた、何故にこのような戦術を取らざるを得ないかも、理解はしていた。
前回に於けるゼットスとの最終戦を生き延びた、あるいは温存されていた兇賊の手下どもは、当然ながらそれだけの実力を持っていると思われる。砦前方で鉄甲騎同士が戦闘状態に突入している間、奴らが何も仕掛けてこないはずはない。今のうちにこれを叩かねば、どのような被害が出るかわからないのだ。
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