騎馬と銃弾

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 そして、その障害となる装甲騎士もまた、充分強敵であり、しかもその数四十騎と、自軍騎兵よりも倍とは言わないまでも確実に多いのだ。この状態で集団線をまともに行えば、確実にこちらが不利である。  また、その支援に専業の砲兵を用いず、少ない騎兵を十騎も()いて当たらせるのにも理由はある。それは、この作戦が速力を重んじた物であり、その要求に応え、迅速(じんそく)に実行できる部隊は彼等騎兵隊しかいないのである。  この時代、車両による兵員輸送という概念は存在していなかった。もし、この時点でシディカがその発想に至っていたのであれば、この作戦は大きく変化したことだろう。  トゥルムも、この作戦の重要性は、確かに理屈の上では理解していた。無論、そのための訓練も積み重ねていた。  だが、誇り高き騎兵隊長は、理解はしたものの、決して納得したわけではなかった。  自らは敵の装甲騎士とは違い、厳密には西方に於ける騎士階級ではない。だが、その誇りは互いに通じるものがあり、馬を駆る者は甲冑でその身を(よろ)い、槍を合わせる戦いこそが、本懐(ほんかい)と考えている。  それ故、その誇りを否定する形となる今回の作戦は、隊長にとっても不本意ではあるのだ。  だからこそ、トゥルムは敢えて作戦の一部を変更し、装甲騎士に対しては重機関銃のみによる攻撃としたのだ。     
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