騎馬と銃弾

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 周囲に目を向けると、他の騎兵も兇賊達の繰り出す攻撃に手を焼いているようだ。分銅付きの投げ縄だけでなく、袋に灰を詰めた簡易煙幕を顔にぶつけられるものや、[死んだふり]からの奇襲といった卑怯千万(ひきょうせんばん)の手段に加え、心象具現化による幻惑、操気術の身体強化による超跳躍など、変幻自在の戦法は、正攻法の戦い方では対処に苦慮するのも当然と云える。  騎兵隊がこのような敵と対峙したことがないわけではなく、現に、前回のゼットス党討伐は彼等も参加していたのだが、それでも、先の装甲騎士に対する奇襲失敗が士気の低下を呼び、その動揺に付け込まれ、危機に陥っているのだ。  そうこうしている内に、騎兵は馬より引きずり下ろされ、それでも湾刀を抜きはなって縄を切ると、甲冑の重さなどものともせずに素早く立ち上がり、自身を落馬させた敵に挑み掛かるが、逆に、大勢の兇賊にのし掛かられ、身動きが取れないところにとどめを刺されてしまう。 「やはりゼットスの手下どもは侮れぬか……」  (なげ)くトゥルムに追い打ちを掛けるが如く、更なる脅威が迫る。 「鉄甲騎が来ます!!」  その言葉通り、騎兵に向けてガイシュ五騎が前進してきた。  本来の作戦では、敵の装甲騎士を機関銃と擲弾筒で蹴散らし、騎兵の機動力で後方のゼットス党を撹乱、数を減らしたところで再度、重擲弾筒を発射、鉄甲騎を牽制しつつ脱出する手筈であった。  だが、騎兵隊長は、自らの意地と、敵に対する同情で装甲騎士への擲弾筒による攻撃を躊躇(ちゅうちょ)し、一度突撃を許した上で、火器による攻撃のみを行った。     
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