騎馬と銃弾

23/27
前へ
/909ページ
次へ
 そして最悪の事態が起きる。 「……機関銃、残弾なし!」  もとより、電撃戦を想定していたため、弾薬の量をそれほど用意していない。ここに来て、作戦が裏目に出た形となったのだ。 「機関銃が止んだ……莫迦め、弾が切れたな!?」  弾切れに気付いた装甲騎士が一斉に騎乗、馬を立ち上がらせて突撃を再開する。一方、後方支援に徹するべく、下馬した上に馬を安全圏に下がらせていた騎兵隊は、鉄甲騎以外のあらゆるものを粉砕する突進力を前に、対処する術を持たない。 「全軍突撃、このまま奴らを踏みつぶせ!」  騎乗した装甲騎士は混乱する少人数の騎兵を蹂躙(じゅうりん)すべく一斉に駆け出した。  もはや絶体絶命と言わざるを得ない状況である。  その時、 「畜生め!」  若い騎兵が、自棄を起こしたのか銃を構え、装甲騎士の前に躍り出た。  いや、それは銃ではない。騎兵は、重擲弾筒を腰撓(こしだ)めに構えていたのだ。 「よせ、その姿勢で撃つな!!」 「……ウーゴ騎兵隊、ここにありぃ――――――!!」  仲間の制止にも耳を貸すことなく、若い騎兵は擲弾筒の引き金を引く。転瞬、水平に向いた銃口から騎士めがけて榴弾が発射され、その反動で、騎兵は数メートル後ろに吹き飛び、そのまま倒れて動かなくなった。  撃ち出された榴弾は、集団の中へと飛び込み、炸裂する。その威力は、如何に装甲で身を固めていても防ぎきれるものではなく、騎士も馬も、等しく吹き飛ばされた。  この至近距離で、味方への被害が軽微であったのは、奇跡と言うしかないだろう。
/909ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加