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そして最悪の事態が起きる。
「……機関銃、残弾なし!」
もとより、電撃戦を想定していたため、弾薬の量をそれほど用意していない。ここに来て、作戦が裏目に出た形となったのだ。
「機関銃が止んだ……莫迦め、弾が切れたな!?」
弾切れに気付いた装甲騎士が一斉に騎乗、馬を立ち上がらせて突撃を再開する。一方、後方支援に徹するべく、下馬した上に馬を安全圏に下がらせていた騎兵隊は、鉄甲騎以外のあらゆるものを粉砕する突進力を前に、対処する術を持たない。
「全軍突撃、このまま奴らを踏みつぶせ!」
騎乗した装甲騎士は混乱する少人数の騎兵を蹂躙すべく一斉に駆け出した。
もはや絶体絶命と言わざるを得ない状況である。
その時、
「畜生め!」
若い騎兵が、自棄を起こしたのか銃を構え、装甲騎士の前に躍り出た。
いや、それは銃ではない。騎兵は、重擲弾筒を腰撓めに構えていたのだ。
「よせ、その姿勢で撃つな!!」
「……ウーゴ騎兵隊、ここにありぃ――――――!!」
仲間の制止にも耳を貸すことなく、若い騎兵は擲弾筒の引き金を引く。転瞬、水平に向いた銃口から騎士めがけて榴弾が発射され、その反動で、騎兵は数メートル後ろに吹き飛び、そのまま倒れて動かなくなった。
撃ち出された榴弾は、集団の中へと飛び込み、炸裂する。その威力は、如何に装甲で身を固めていても防ぎきれるものではなく、騎士も馬も、等しく吹き飛ばされた。
この至近距離で、味方への被害が軽微であったのは、奇跡と言うしかないだろう。
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