騎馬と銃弾

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 城壁内側――  戦線を離脱した騎馬隊は、どうにかウーゴ砦に帰還した。  騎馬隊が城門を通過した後、巨大な落とし戸と格子(こうし)が落とし閉められる。 「お疲れ様でした……ひとまず、治療と休息を取って下さい」  シディカの出迎えに、トゥルムは、 「申し訳ありません……お預かりした武器を全て失ってしまいました……」  と、(こうべ)を垂れる。  謝るべき所はそこではない、と、トゥルムもわかってはいた。  だが、シディカの作戦を全て肯定すれば、騎兵としての信念を否定してしまう気がしていたのだ。それでいて、声高に主張することも出来ない。自身のその判断により、結果的に敗退に近い結果を出し、戦死者を出したことを理解してはいたのだ。  それは、シディカも気付いていた。  藩王と共に実戦を少なからず経験し、隊を指揮して兇賊などと戦ってきた兄イバンと違い、シディカにとって、副隊長就任以来、これが実戦に於いては初めて独自判断で立案、実行に及んだ作戦であり、それは全てが自分の頭の中と、卓上で描かれた空論でしか無く、実際に遂行する戦闘員の習慣や心境を考慮し切れていなかったのである。     
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