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砦攻防戦
城壁内側――
シディカ、ドルージ、そして騎兵隊長が、辻褄の合わない死傷者に頭を悩ませている暇はなかった。
「報告……鉄甲騎五騎、街道のL字峡谷より砦に向けて尚も進行中……続いて、騎馬二十八騎、兇賊五十前後、後方に、凱甲騎も見ゆ……
敵は、鉄甲騎を先頭に進軍する布陣に切り替えた模様」
その報告に、シディカはすぐさま城壁の外郭塔に登り、双眼鏡を手にしつつ、補佐官アガルに命令を下す。
「すぐに手筈通り、迎え撃つ準備を……それと、砦内部の警戒もお願いします。もしかしたら、間者に入り込まれたかも知れません……
ただし、味方に混乱が出ないよう、一部士官にのみ、知らせて下さい。
……これより、城壁への出入りは昇降口のみとします」
「間者に対する捜査の方は……」
「無論、それは徹底しますが、残念ながら、人手が足りません……もう間もなく、自警団の皆様方が駆けつけてきますが、もし、その中に紛れ込まれたら、発見は困難になるでしょう……」
命令を受けたアガルは、
「(厄介なことになった……)」
と、呟きつつも各隊に命令を伝達する。一方で、ドルージは城門右舷の外郭塔から、鉄甲騎の各小隊に下知を飛ばしている。
「いよいよ来るぞ!……相手の鉄甲騎は兇賊でも辺境の田舎騎士でもない。反逆者とはいえ、元は正規の王国軍だ。気合いを入れてかかれぇ!!」
その声に、鉄甲騎全機が「応っ!!」と、拡声器越しに掛け声を上げ、駆動音と共に右腕の長柄斧を天に向けて突き上げる。
持ち場に戻った騎兵隊長も、部下へと下知を飛ばす。
「敵は鉄甲騎戦の合間を突き、必ず騎兵を繰り出してくる。その時こそ、我らの出番だ……田舎騎兵の槍が如何ほどかを、奴らに知らしめる。
いいか、ここからが我ら騎兵隊の本当の見せ場だ!!」
鉄甲騎同様、歓呼を上げる騎兵隊を見渡すトゥルムの心境は複雑だった。
――我々が間者を引き込んだようなものだ……
小脇に抱えた兜を持つ手の震えが止まらなかった。
そんな中、降伏勧告を携えた使者が城門前に来たという知らせが届いた。
それは、この後に本格的な城砦戦が始まるという宣言でもあった。
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