空回りの評価試験

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 鉄甲騎格納庫――  試験に関わらない機関士達が、その結果を気にしながらも鉄甲騎の修理を進めていた。 「畜生……俺も見たかったなぁ。ナランも、そう思うだろ?」  一人の予備機関士が、彼等同様、作業に従事するナランにも声を掛ける。 「…………」  沈黙のまま作業を続ける少年に、「聞いてるのか?」と、問いかける予備機関士を、同僚が止める。 「よせ……今のナランには、何を言っても無駄だ。こいつは、ふて腐れるとまるで機械のようになっちまうんだ……」 「そうだった……」  その言葉通り、ナランは電動機と伝達装置の修理に没頭していた。それこそ、一言も口を開かず、眉一つ動かすことなく、黙々と、そして正確、確実に修理を進める。  外装を外し、切れた配線を繋げ直し、試験器を繋げて通電を確認、それを組み立てる。その後は伝達装置の歯車を分解し、壊れた部品を交換、手動で回転を確認、油を差した後、電動機と繋げる。ここまで組めば、本体に取り付け、試験をするだけだ。  その揶揄(やゆ)通りナランは、一台の工作機械と化していた。  皮肉なことに、こうなったら、一切の手違いを起こさない完璧な作業をこなすのだが、人間味は一切無くなるのだ。  これはおそらく、一種の精神的自己防衛なのだろう。  またそれは、砦に来たばかりのナランの姿でもあった。 「一年前に、逆戻りだな……」  だが、ここで朗報がもたらされる。 「ナラン、イバン大隊長がお呼びだ。急ぎ練兵場に来いってさ……」  しかし……  ――今更……  ナランは特に表情を変えなかった。  ――僕とヘルヘイさんとの腕の違いを見せつける為に呼ぶのだろう。  そう思った。  ――絶対に見てやるもんか!
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