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再び練兵場――
結局、ナランはやってきた。
やりきれない表情のまま、自転車を走らせてきたナランを待っていたのは、イバン大隊長とシディカ副隊長に、あれから不機嫌なままのドルージ機関士長……
そして、機関士達に囲まれたサクラブライ。
機能がすべて停止したままであるため、代わりの床几に座り、首を自分に向ける紺色の[鎧武者]……
ここまで来ても、ナランの表情は暗いままであった。
それを見上げる少年に、シディカが話し掛けるまでは。
「ナラン君……もう一度、サクラブライの機関士をしてくれないかしらぁ」
無表情だったナランの目に、光が戻った。
「僕が……サクラブライの機関士に……?」
まだ信じられなかった。
夢ではないかと疑った。
しかし……
「臨時措置だ。試験が始まる時刻を大きく過ぎている。今回の試験に限り、サクラブライの機関士として乗り込むことを命ずる」
シディカの言葉に続き、改めて発せられたイバンの命令に驚くナランは、今度はドルージを見る。
「……隊長の下知だ。さっさと乗り込め」
機関士長は、無愛想に、そしてナランの顔を見ずに告げた。
――夢じゃないんだ!
「……直ちに乗り込みます!」
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