空回りの評価試験

21/31
前へ
/909ページ
次へ
 再び練兵場――  結局、ナランはやってきた。  やりきれない表情のまま、自転車を走らせてきたナランを待っていたのは、イバン大隊長とシディカ副隊長に、あれから不機嫌なままのドルージ機関士長……  そして、機関士達に囲まれたサクラブライ。  機能がすべて停止したままであるため、代わりの床几(しょうぎ)に座り、首を自分に向ける紺色の[鎧武者]……  ここまで来ても、ナランの表情は暗いままであった。  それを見上げる少年に、シディカが話し掛けるまでは。 「ナラン君……もう一度、サクラブライの機関士をしてくれないかしらぁ」  無表情だったナランの目に、光が戻った。 「僕が……サクラブライの機関士に……?」  まだ信じられなかった。  夢ではないかと疑った。  しかし…… 「臨時措置だ。試験が始まる時刻を大きく過ぎている。今回の試験に限り、サクラブライの機関士として乗り込むことを命ずる」  シディカの言葉に続き、改めて発せられたイバンの命令に驚くナランは、今度はドルージを見る。 「……隊長の下知だ。さっさと乗り込め」  機関士長は、無愛想に、そしてナランの顔を見ずに告げた。  ――夢じゃないんだ! 「……直ちに乗り込みます!」     
/909ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加