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これまでの仏頂面が嘘のような笑顔を見せるナランは、梯子を勢いよく駆け上がり、天蓋を開けて手慣れた感じで機関室に飛び込む。
「前席、機関起動するから、待ってて!?」
ナランの声に、モミジは安堵しつつも返事をすることなく、
「(最初から、この子に乗って貰えば良かったのに)」
と、小声で呟く。
ともかく、これで始められる。
――後は早く終わればいいだけだ。
そんなモミジの気持ちを知らず、ナランは機関始動の準備に入る。
「火よ!……」
父の形見である首飾りを掲げて起こした発火術の火が投火口に投げ込まれる。その火の玉は、当たり前のように受け入れられ、焔玉に命が宿る。
「ホシワ機関再始動……水温計、温度計異常なし……弁、活栓、定位置に戻す……汽罐内圧力上昇、蒸気注入……焔玉機関、始動!」
掛け声とともに、焔玉機関が唸りを上げて動作を再開する。それは、先程とは違い、五月蠅いながらも、小気味よく安定した駆動音を鳴らしていた。
なんの問題も起きない。始動までの流れは、全て順調に進んだ。
「そんな……莫迦な!?」
機関士達、イバン、そしてドルージは驚愕を隠せない。
「ナラン君……魂魄回路の様子はどうですかぁ!?」
拡声器で問いかけるシディカに、ナランは
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